歌屋ボーカル研究所

     歌全般、歌唱法、声などに関するあれこれ

2010年09月

小説が好きな方、更に小説を自分で書かれたりする方はよくご存知と思いますが、小説の文章は”情景描写””心理描写”で構成されています。

例えばホテルのロビーで人を待っているといった状況において、そこにあるソファやテーブル、飾られている絵や花、窓から見える景色、周りにいる人々、など背景の説明を行うのが”情景描写”、一方待ち人が現れず”だんだんいらいらしてきた、今回は絶対許さないぞ”といったその人の気持を表現しているのが”心理描写”です。

さて小説に比べ遥かに短い歌詞ですが、やはり”情景描写”と”心理描写”があります。そしてこの観点から、歌を上手く歌うための重要なポイントがあります。それは、原則として”情景描写は淡々と、心理描写は気持ちを入れて歌う”です。

具体例を上げて説明していきましょう。今回は演歌を例に取ります。演歌は”情景描写”と”心理描写”の区別が分かりやすいものが多いのです。

 五木ひろしさん『よこはまたそがれ』の歌詞

曲の前半に単語を羅列するだけで”情景描写”を行っているのが特徴的です。最初の”よこはま”から前半最後の”女の涙”まで、アイテムを並べることでホテルの小部屋の情景を描写しています。その後サビの”あの人は・・・”からは心理描写と捉えてよいでしょう。

この曲の場合、前半の単語一つ一つに気持ちを込めて歌ったらくどいですよね。ですので、前半部分は割と淡々と単語を並べる感じで、そしてサビで一気に気持ちを入れて歌ってください。

 石川さゆりさん『津軽海峡冬景色』の歌詞

まず最初の”上野発の”から”聞いている”までの”情景描写”により、この歌の世界感、背景をしっかり説明しています。

続いての”私も一人”から”泣いていました”の部分も、取り方によっては自身の情景を描写しているとも言えるのですが、少なくとも前半部分のような背景の状況説明ではなく自分自身の事、しかも”泣いている”という感情の動きを語っているので、これは心理描写とも捉えられます。このように明確にどちらかに分けられない場合もありますし、また分ける必要もありません。

そして最後の”ああ・・・”。はい、言わずもがなの心理描写です。この曲のみならず、”ああ・・・”は言葉にならない気持ちが溢れ出たときの表現ですので、ここぞとばかりに思いきり気持ちを込めて歌ってください。決して”あー”と棒読みにならないように。

次回は同じテーマで、演歌以外の曲を取り上げます。また”情景描写は淡々と、心理描写は気持ちを入れて歌う”の例外についても考えてみたいと思います。

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♪Singing songs changes your world.

真夏日の連続から一転寒い雨となりました。今年の春はそれらしい日があまりなく冬から夏に飛んだ感がありましたが、秋も同じように飛んでしまうのでしょうか。

ところで皆さんはゲームをやられますか?歌屋のうちにもWiiやDSがあり、またPC(パソコン)でも以前は結構ゲームに時間を費やしていましたが、ここのところすっかり遠ざかっていました。

ところが最近たまたま見つけたPCゲームが大変面白くハマってしまいました。それはPeggle(ペグル)という名前で、分類としてはパチンコ、古くはコリントゲーム・スマートボールの仲間となるかと思います。ただこれらが玉を入れる穴と釘で構成されているのに対し、ペグルは釘にあたるピンがあるだけで穴はありません。

では何を狙うのか?ペグルでは打ち出した玉がピンに当たるとそのピンが消えます。例えば100本のピンが出てきてその内70本が青色で30本が赤色だったりするのですが、その赤色のピンを持ち玉10ヶで全て消すことができれば1面クリアとなります。基本ルールはこれだけなので、子供でも簡単にできます。

ただ毎回ピンの配置や画面のデザインが変化したり、いろいろなイベントが発生したりするので、つい時間を忘れてのめり込んでしまいます。以下サイトでお試し版が無料で遊べますので、興味のある方は一度やられてみてはいかがでしょうか。 

  http://www.popcap.jp/game_detail.php?game_no=17&mode=online

但しハマってしまっても責任持ちません(笑)。そう言う歌屋はとうとうお試し版では飽き足らなくなって、製品版をオンラインで購入してしまいました。。。因みに日本語版は\1,980なのに対し、英語版なら10$で購入できます。上記のようにルールが簡単なので、英語版でもまず問題ないと思います。

秋の夜長、たまにはゲームもよいのではないでしょうか。

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♪Singing songs changes your world.

前回”歌詞の意味は理解しなくてよい”と書きましたが、何も考えずにただ歌詞をたどって行けばよいのかと言ったら、もちろんそんなことはありません。では歌詞をどう捉えていったらよいのでしょうか。

そもそも何のために歌うのか、ということについて少しだけ考えてみたいと思います。一つの考え方として、”歌い手から聴き手へ、何らかの情報を伝えるための”としてみましょう。

ここでの情報とは、見たり聞いたりできるものとしてのメロディや歌詞そのもの、歌声や表情・動作などと、見聞きできないイメージ・気持ち・思いといったものの2つがあります。よく歌を聴いて感動したと言いますが、それはやはり目に見えない思いが伝わったときでしょう。

では歌詞に関して伝えるべきものを考えてみたいと思います。また例として一青窈『ハナミズキ』を上げますが、この意味不明の歌詞から何をどう伝えたらよいのでしょうか。アプローチの一方法として、”1フレーズから受けるイメージを伝える”があります。

この歌詞には”5月のこと”、”夏は暑すぎて”といった言葉を始めとして、初夏の頃を連想させるフレーズが多くあります。因みにハナミズキもこの時期の花ですね。ですのでまずここから初夏の爽やかなイメージを感じ取っててください。

またサビのフレーズでは、これだけでは背景は定かでないものの、誰かの幸せを真剣に願い応援している姿がイメージされます。

このように歌詞の1フレーズから受けるイメージを持ち、それを伝える気持ちで歌うようにしてみてください。それだけでただ歌詞をたどって歌うのとは格段の違いが出てきます。歌唱の技術面だけでなく、こういった取り組みも歌が上手くなる上でとても大切です。

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この春まで娘が通っていた小学校にPTAバンドがあり、歌屋もギターでそこに参加しておりました。毎年夏に大きなコンサートを体育館で行っていて、今年も8月の終わりにあったのですが、なぜか卒業したはずの歌屋もまた参加させていただくことになり、久々に小学校へ行ってきました。

このPTAバンドは総勢30数名で、クラシックからポップス・ロック、果てはアニソンまで実に幅広いレパートリーをこなし、コンサートは親だけでなく子供や先生もダンスや歌で参加する大変楽しいものです。

このバンドの音楽監督をしているのは、元PTAのお母さんかつ現役プロキーボードプレイヤーで、全曲・全楽器のアレンジと楽譜書きを一人でこなされています。またいっしょに参加されているご主人もプロドラマーで、この方が叩くと全体のリズムがバシッと締まりますし、ちょっとした8ビートを叩いているだけでも本当に心地良く響いてきます。2人は紅白出場某歌手のバックバンドを務めたりもされているまさにプロで、こういった方の仕事を見ていると”やはりプロは違う”とつくづく思わされました。

さらに今年から参加された保護者でギターの方はライブハウスの専属プレイヤーで、やはり演奏はかっちりとしていて素人のそれとは一線を画すものでした。

”どんだけ贅沢なPTAバンドなんだ”といった感じですが、こういった方々といっしょに演奏させていただいて大変楽しい一時を過ごすとともに、歌屋も歌を教えるプロとしてしっかり頑張らなくてはとの思いを新たにした一日でした。

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♪Singing songs changes your world.

”歌詞の扱い”の2回目は”歌詞の意味”についてです。タイトルを見て”あれ、間違ってない?”と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、これで合ってます。今回は敢えて刺激的なタイトルを付けてみました。

おそらく多くのボーカルインストラクターが、”歌詞は意味を理解して歌うことが大切ですので、まずは一度歌詞を朗読してみましょう。”といった指導をしていると思います。これは間違っていませんし、歌詞の意味を理解した上で歌えばより説得力が増すことになるでしょう。

ではなぜ”理解しなくてよい”のか。まず以下の歌詞をご覧になってください。

 一青窈さん『ハナミズキ』の歌詞

大変人気のある曲ですので皆さんご存知でしょう。カラオケでレパートリーにされている女性も多いと思いますが、この歌詞の意味をちゃんと理解して歌っている方はいますでしょうか?そもそもこの歌詞は何度読んでも意味不明です。

実はこの歌詞は911テロがきっかけで書かれたものであると本人がインタビュー等で語っていました。でもこの歌詞からのみでその背景を読み取ることはまず不可能でしょう。また本当に歌詞の意味を理解して歌わなければならないのなら、この歌を歌う度に911テロの悲惨な状況をイメージすることになりますが、それはこの曲の持つ柔らかく優しいイメージとそぐわないですよね。

それではどうしたらよいのか、については次回詳しく書きたいと思います。

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